適応障害で退職を引き止められた場合の判断基準方法

2024年5月17日

適応障害と診断されたのを機に今の職場で働けないと思い、退職を考える人は少なくないと思われます。しかし適応障害を持ちながらも会社の方から引き止められる事も少なくありません。

その場合、働き続けても大丈夫なのか?また退職したい理由として職場にいる人から適応障害だと知られるのが嫌だという理由もあり、更に引き止めてくる上司に対しても信用出来ないケースもあると思われます。

その場合、どのように引き止めてくる人を説得し、退職すべきか判断すれば良いのか?この記事では適応障害で退職したいのに引き止めに合った場合の対処法をITエンジニアや看護師の2人の具体的な体験談を交えながら詳しく解説します。

ITエンジニアの体験談:適応障害で退職を引き止められた場合

ITエンジニアのAさんは、長時間労働と厳しい納期に追われる日々を過ごしていました。ある日、心身の不調を感じ、精神科を受診したところ適応障害と診断されました。Aさんは退職を決意し、上司にその旨を伝えましたが、会社から引き止められました。

引き止めの理由と対策

会社は、Aさんのスキルと経験がチームにとって重要だと考え、勤めながら適応障害を治すよう退職を引き止めました。上司からは、以下の提案がされました:

  1. 休職制度の利用:一定期間の休職を取る事で、心身を休める時間を確保する。
  2. 職場環境の改善:仕事量の調整や業務内容の変更を検討する。
  3. フレックスタイム制の導入:柔軟な働き方を導入し、Aさんが自身のペースで働けるようにする。

Aさんは一度はこれらの提案を受け入れ、休職を取って療養し、職場環境の改善とフレックスタイム制の導入により、しばらくは症状が改善されるように見えました。

ただ問題だったのは周囲の同僚からの軋轢です。

当初、上司は適応障害は個人情報であり、同僚に話さないという判断をしました。

その結果、同僚たちはAさんが特別扱いされていると感じ、Aさんとの間に距離が生まれてしまいました。Aさんが特別な配慮を受けている事について不満や疑念を抱く同僚もおり、職場での協力体制が崩れてしまいました。

結果、Aさんの症状は人間関係が原因で再び適応障害が悪化し、職場環境に対する不信感も高まりました。最終的にAさんは職場での信頼関係が回復する見込みがないと判断し、再度退職を決意しました。

看護師の体験談:適応障害で退職を引き止められた場合

看護師のBさんは、夜勤が続く過酷な勤務環境で働いていました。夜勤の連続や過度な患者対応、チームリーダーとしての責任など、ストレスが蓄積し、適応障害を発症しました。精神科を受診した結果、適応障害と診断され、Bさんは退職を決意し、上司にその旨を相談しましたが、病院から引き止められました。

引き止めの理由と対策

病院は看護師不足の為、Bさんの退職を避けたいと考えました。上司からは、以下の提案がなされました:

  1. シフトの調整:夜勤を減らし、日勤中心のシフトに変更する。
  2. メンタルヘルスケアの導入:カウンセリングの受診を促し、メンタルヘルスケアを強化する。
  3. サポートグループの参加:同じような悩みを持つ同僚とのサポートグループに参加し、支え合う環境を作る。

Bさんはこれらの提案を一度は受け入れ、シフト調整とメンタルヘルスケアを導入する事で症状の改善を図ろうとしました。しばらくの間、日勤中心のシフトで体力的な負担が軽減され、カウンセリングを受ける事で精神的にも少しずつ回復を感じました。またサポートグループへの参加は、同じ境遇の同僚との交流を通じて精神的な支えとなりました。

しかし上司は適応障害に関する情報リテラシーが欠如しており、Bさんの個人的な状況を他の同僚に話してしまいました。

その結果、Bさんの適応障害に対する偏見や誤解が生じ、職場での立場が微妙になってしまいました。

同僚たちとの間に距離が生まれ、チームでの協力体制が崩れ、仕事を分担してもらう事が難しくなりました。Bさんの症状は再び悪化し、職場環境に対する不信感も高まりました。最終的に、Bさんは職場での信頼関係が回復する見込みがないと判断し、再度退職を決意しました。

適応障害で退職を引き止められた場合の判断基準

AさんとBさんのケースから学ぶべき点は、適応障害に対する対応方法が職場環境に及ぼす影響について慎重に判断する必要があるという事です。

適応障害を持ちながら働く事がどれだけの弊害を生むのかを見極める為には、以下のポイントを具体的にどのように確認すればよいのかを実例を使って紹介します。

1. 適応障害をオープンにすべきかどうか

適応障害をオープンにする事には利点と欠点があります。

オープンにする事で同僚からの理解とサポートを得やすくなる一方で、偏見や誤解を招くリスクもあります。AさんとBさんのケースを見てみましょう。

Aさんの場合:適応障害をオープンにしない選択をしました。その結果、同僚から特別扱いされていると感じられ、軋轢が生じました。この問題を避ける為には、以下のようなステップを踏む事が有効です:

  • 上司との相談:適応障害をオープンにするかどうかを上司と相談し、リスクと利点を共有する。
  • 選択的な情報共有:必要最低限の情報を選んで共有する。例えば病名ではなく「健康上の理由で一部の業務調整が必要です」と伝える。

Bさんの場合:適応障害をオープンにした結果、偏見や誤解が生じ、職場での立場が悪化しました。この問題を避ける為には:

  • プライバシーの約束:上司に適応障害の情報を共有する際に、プライバシーを守るよう強く依頼する。
  • 教育の提供:職場で適応障害に関する基本的な教育を提供し、理解を促進する。

2. 職場環境の改善が実現可能かどうか

職場環境の改善が実現可能であれば、適応障害の症状を軽減しながら働き続ける事が出来ます。以下は、その実現可能性を確認する為の方法です。

Aさんの場合:フレックスタイム制や休職制度の導入が提案されましたが、同僚からの反発がありました。この問題を避ける為には:

  • 試行期間の設定:提案された改善策を一定期間試行し、その効果を評価する。
  • フィードバックの収集:定期的にフィードバックを収集し、改善の必要があるかどうかを判断する。

Bさんの場合:シフトの調整とメンタルヘルスケアが提案されました。これらが実際に改善されたかどうかを確認する為には:

  • 具体的なスケジュールの設定:改善策の実行スケジュールを設定し、進捗を確認する。
  • 定期的なチェックイン:上司と定期的にチェックインし、職場環境が実際に改善されているかどうかを確認する。

3. プライバシーの保護

適応障害に関する情報の取り扱いについて、上司や同僚が適切なリテラシーを持っているかどうかも重要な判断基準です。

Aさんの場合:上司が情報を秘密にするという選択をしましたが、それが逆効果になりました。この問題を避ける為には:

  • プライバシー契約の締結:情報共有の際にプライバシー契約を締結し、情報漏洩を防ぐ。
  • 明確なガイドラインの設定:プライバシーに関する明確なガイドラインを設定し、遵守する。

Bさんの場合:上司が情報を漏らしてしまいました。この問題を避ける為には:

  • 教育とトレーニング:上司と同僚に対して適応障害に関する教育とトレーニングを提供し、適切な対応方法を学ばせる。
  • 匿名の相談窓口:匿名で相談出来る窓口を設置し、プライバシーを守る。

4. 自身の健康と職場環境のバランス

最終的には、自身の健康と職場環境のバランスを見極める事が重要です。

Aさんの場合:職場での信頼関係が崩れた為、健康を優先して退職を決意しました。この問題を避ける為には:

  • 自己評価の実施:定期的に自己評価を行い、職場環境が健康に与える影響を見極める。
  • 第三者の意見の活用:信頼出来る第三者(医師やカウンセラー)の意見を活用し、適切な判断を下す。

Bさんの場合:同僚との関係が悪化し、再度退職を決意しました。この問題を避ける為には:

  • 定期的な健康チェック:定期的に健康チェックを行い、職場環境が適応障害に与える影響を確認する。
  • 柔軟な働き方の模索:職場環境が改善されない場合、リモートワークなどの柔軟な働き方を模索する。

まとめ

適応障害で退職を引き止められた場合には、

  1. 適応障害をオープンにするかどうか、
  2. 職場環境の改善が実現可能かどうか、
  3. プライバシーの保護が適切に行われているかどうか、
  4. そして自身の健康と職場環境のバランスを具体的にどのように確認するか

が重要です。

AさんとBさんのケースを参考にし、適切な対応策を講じる事で、最適な判断を下す事が出来るでしょう。